イスラム原理主義武装組織ISILとは?アル・カイダも持て余す過激組織 [ニュース]
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イラクとレバントのイスラム国
ISIL(Islamic State in Iraq and the Levant)、
またの名をISIS(Islamic State of Iraq and al-Sham)。
意味はどちらも似たようなもので、レバント(Levant)やアルシャーム(al-Sham)と言うのはシリア地方の事を指し、イラクとシリア地方のイスラム国家と言う意味だ。
聞いたこと無いんだけど……と言う人もいるかもしれない。
というのも、ISILと言う呼称で活動し始めたのは比較的最近の事だ。
最初期の名称は、「JTJ(タウヒードとジハード集団)」
創設者は「アブー=ムスアブ・アッ=ザルカーウィー」
それが、
「イラクの聖戦アル=カーイダ組織」
→「ムジャーヒディーン諮問評議会」
→「イラク・イスラーム国」
→「ISIL(イラクとレバントのイスラム国)」
と、名称が変わっている。
当初は過激派武装集団として、ザルカウィの故郷であるヨルダンを中心に、アフガニスタンなどで活動していたが、米軍のアフガン侵攻によりイラクに逃げ込むことになる。
彼の組織の特徴としてあげられるのは、
祖国の為に戦う兵士を集めると言うよりは、
「イスラムの敵と戦う兵士を集め、育て、戦わせる組織」だったという事だ。
そのため、設立後から積極的に諸外国に対して不満を持つ保守的なイスラム教徒を集め、
戦闘方法を教育し、さらに強烈な敵愾心を植え付けさせることで闘争意欲を煽っていった。
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イラク戦争による勢力拡大
そして、イラクに逃げ込んで勢力を蓄えつつあったザルカウィの組織は、イラク戦争後に更に勢力を拡大する事となる。
外国人を中心に組織されていた彼の組織は、イラクのために、イスラムのために米国と戦おうとするイスラム教徒が数多く集まるようになる。
イラクと言う国よりも、アメリカや欧米諸国に憎しみを持った彼らの集団は、
イラク戦争後、イラクに入ってきた親米国のの外国人を片っ端から拉致して殺害すると言う手段に出るようになる。
「イラク日本人青年殺害事件」を起こした組織もこの組織だ。
その後、2004年にアル・カイダと正式に合流し、「イラクの聖戦アル=カーイダ組織」と名乗るようになる。
それからはビン・ラディンの配下組織として活動していたが、「イスラム教の敵を倒したい外国人」で構成されていたこの組織は、同じイスラム過激派を含め、徹底的に邪魔になる勢力を排除していったため、アル・カイダですら彼らの組織を持て余し始める。
2006年にはラマーディーの警察署を襲撃し、罪のないイラク人も含めて大量に殺害したため、
アル・カイダ内部のイラクの為に戦ってきた兵士たちと対立し、アル・カイダから独立。
「ムジャーヒディーン諮問評議会」結成する。
しかしその直後、ザルカウィのやり方に不満を抱いていた組織内部からの密告により、米軍の爆撃と特殊部隊の攻撃を受け、指導者であったザルカウィが死亡。
新しい指導者となったアブー・アイユーブ・アル=マスリーは、組織の方向性を大幅に変えるため、ここで組織を一度解散。
そして、イラクで政権を取っていたイスラム教シーア派と対立していたスンニ派の武装組織を大量に合併、より大きな組織である「イラク・イスラーム国」を名乗る事となる。
幾度と無くバクダッドで爆破テロを行い、二千人近くを殺傷している。
2010年に米軍の攻撃で、再び指導者を失うものの活動を継続。
米軍の撤退後もイラク政府を相手に活動を続けた。
シリア内戦による勢力拡大
チュニジアでのジャスミン革命から、SNSを通してアラブの春がシリアにも拡大。
これにより、2011年よりシリアは内戦に突入する。
イラク戦争から10年。
アフガン戦争、イラク戦争を通じて勢力を拡大していった彼らは、ここで大きな転機を迎える。
イラク戦争などで、イラク周辺では強い反欧米の機運が高まりつつある中、民主化を促すアラブの春。
シリアの内戦は、勢力拡大の格好の機会となってしまった。
アラブの春はチュニジア、リビア、エジプト、イエメン、など多くの国々で発生した。
リビアでは大きな内戦があったものの、イラク周辺の武装組織が参加する機会は無かった。
しかし、シリアはイラクの西。国境を越えてすぐの国だ。
イラク戦争の時には、シリアからの義勇兵が集まったが、今度はイラクの武装組織が反政府勢力に加わって戦いを始めることになる。
この時に、「イラク・イスラーム国」という組織名ではシリアで戦うのが不自然なため、
再び名称を変更。
現在のISIL(イラクとレバントのイスラム国)と言う名称に変わる。
これにより、イラク人・ヨルダン人・シリア人、その他のイスラム国家から集まった兵士達は、
ここでも過激な活動を繰り広げ、政府支配下の街をいくつも武力で制圧した。
現在、事実上シリアに置ける第二の勢力となっている。
最近までの勢力図(灰色がISILの勢力、赤色が政府勢力、黄緑がクルド人勢力、青がその他)
アル・カイダですら持て余す組織
イスラム原理主義者の集まりであり、非常に厳格なイスラムの戒律に従う彼らは支配地域の人々を無理やり戒律に従うように弾圧。恐怖政治で人々を支配する。
彼らの過激なやり方は、シリア自由軍(シリアの反政府組織の集合体)などの他の反政府組織の反発を買うが、対立する反政府組織にまで攻撃を加えるほどであった。
シリア自由軍の司令官まで殺害した彼らは、
シリア自由軍との連携を約束していたアル・カイダの怒りを買い、
ザルカウィ死亡後に和解し、共闘関係にあったにも関わらず、
再び、「過激すぎる活動のせいで」アル・カイダと対立することになる
アル・カイダとの共闘関係が無くなったことで、彼らは更に自由に動ける様になってしまった。
彼らの攻撃と政府軍の攻撃の両方に晒されたシリアの反政府組織は壊滅状態になり、最終的に最大の武装組織となったISILに反政府勢力の戦力が集約されるようになる。
そして、シリアで十分な戦力を得た彼らは、再びイラクに目を向ける。
4月にシーア派のヌーリー・マーリキーが再選を果たしたため、スンニ派の反対勢力の不満が高まりつつあったのだ。
6月。遂に行動に移す。
軍隊並の戦力と電撃的な作戦行動で、数日でいくつもの大都市を落とし、
首都のバクダットに迫りつつある。
これは度重なる刑務所襲撃と捕虜の奪還で、
有力な元イラク軍の指導者や元過激派組織の幹部を吸収したことで、
組織的な統率が取れ、軍隊の様な活動が可能になっていた。
圧倒的な士気と実戦経験の豊富な指導者が集まったISILはイラクの正規戦力を撃破し、
米軍なきイラクを制圧しようとしているのだ。
脱走疑惑があるものの、最後の米軍捕虜が開放され、米軍の中東での戦いが終わったかに見えた矢先、
イスラム過激派との戦いは、まだまだ続きそうだ。
イラク戦争後最大の危機が今、イラクに訪れている。
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意味はどちらも似たようなもので、レバント(Levant)やアルシャーム(al-Sham)と言うのはシリア地方の事を指し、イラクとシリア地方のイスラム国家と言う意味だ。
聞いたこと無いんだけど……と言う人もいるかもしれない。
というのも、ISILと言う呼称で活動し始めたのは比較的最近の事だ。
最初期の名称は、「JTJ(タウヒードとジハード集団)」
創設者は「アブー=ムスアブ・アッ=ザルカーウィー」
それが、
「イラクの聖戦アル=カーイダ組織」
→「ムジャーヒディーン諮問評議会」
→「イラク・イスラーム国」
→「ISIL(イラクとレバントのイスラム国)」
と、名称が変わっている。
当初は過激派武装集団として、ザルカウィの故郷であるヨルダンを中心に、アフガニスタンなどで活動していたが、米軍のアフガン侵攻によりイラクに逃げ込むことになる。
彼の組織の特徴としてあげられるのは、
祖国の為に戦う兵士を集めると言うよりは、
「イスラムの敵と戦う兵士を集め、育て、戦わせる組織」だったという事だ。
そのため、設立後から積極的に諸外国に対して不満を持つ保守的なイスラム教徒を集め、
戦闘方法を教育し、さらに強烈な敵愾心を植え付けさせることで闘争意欲を煽っていった。
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イラク戦争による勢力拡大
そして、イラクに逃げ込んで勢力を蓄えつつあったザルカウィの組織は、イラク戦争後に更に勢力を拡大する事となる。
外国人を中心に組織されていた彼の組織は、イラクのために、イスラムのために米国と戦おうとするイスラム教徒が数多く集まるようになる。
イラクと言う国よりも、アメリカや欧米諸国に憎しみを持った彼らの集団は、
イラク戦争後、イラクに入ってきた親米国のの外国人を片っ端から拉致して殺害すると言う手段に出るようになる。
「イラク日本人青年殺害事件」を起こした組織もこの組織だ。
その後、2004年にアル・カイダと正式に合流し、「イラクの聖戦アル=カーイダ組織」と名乗るようになる。
それからはビン・ラディンの配下組織として活動していたが、「イスラム教の敵を倒したい外国人」で構成されていたこの組織は、同じイスラム過激派を含め、徹底的に邪魔になる勢力を排除していったため、アル・カイダですら彼らの組織を持て余し始める。
2006年にはラマーディーの警察署を襲撃し、罪のないイラク人も含めて大量に殺害したため、
アル・カイダ内部のイラクの為に戦ってきた兵士たちと対立し、アル・カイダから独立。
「ムジャーヒディーン諮問評議会」結成する。
しかしその直後、ザルカウィのやり方に不満を抱いていた組織内部からの密告により、米軍の爆撃と特殊部隊の攻撃を受け、指導者であったザルカウィが死亡。
新しい指導者となったアブー・アイユーブ・アル=マスリーは、組織の方向性を大幅に変えるため、ここで組織を一度解散。
そして、イラクで政権を取っていたイスラム教シーア派と対立していたスンニ派の武装組織を大量に合併、より大きな組織である「イラク・イスラーム国」を名乗る事となる。
幾度と無くバクダッドで爆破テロを行い、二千人近くを殺傷している。
2010年に米軍の攻撃で、再び指導者を失うものの活動を継続。
米軍の撤退後もイラク政府を相手に活動を続けた。
シリア内戦による勢力拡大
チュニジアでのジャスミン革命から、SNSを通してアラブの春がシリアにも拡大。
これにより、2011年よりシリアは内戦に突入する。
イラク戦争から10年。
アフガン戦争、イラク戦争を通じて勢力を拡大していった彼らは、ここで大きな転機を迎える。
イラク戦争などで、イラク周辺では強い反欧米の機運が高まりつつある中、民主化を促すアラブの春。
シリアの内戦は、勢力拡大の格好の機会となってしまった。
アラブの春はチュニジア、リビア、エジプト、イエメン、など多くの国々で発生した。
リビアでは大きな内戦があったものの、イラク周辺の武装組織が参加する機会は無かった。
しかし、シリアはイラクの西。国境を越えてすぐの国だ。
イラク戦争の時には、シリアからの義勇兵が集まったが、今度はイラクの武装組織が反政府勢力に加わって戦いを始めることになる。
この時に、「イラク・イスラーム国」という組織名ではシリアで戦うのが不自然なため、
再び名称を変更。
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これにより、イラク人・ヨルダン人・シリア人、その他のイスラム国家から集まった兵士達は、
ここでも過激な活動を繰り広げ、政府支配下の街をいくつも武力で制圧した。
現在、事実上シリアに置ける第二の勢力となっている。
最近までの勢力図(灰色がISILの勢力、赤色が政府勢力、黄緑がクルド人勢力、青がその他)
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彼らの過激なやり方は、シリア自由軍(シリアの反政府組織の集合体)などの他の反政府組織の反発を買うが、対立する反政府組織にまで攻撃を加えるほどであった。
シリア自由軍の司令官まで殺害した彼らは、
シリア自由軍との連携を約束していたアル・カイダの怒りを買い、
ザルカウィ死亡後に和解し、共闘関係にあったにも関わらず、
再び、「過激すぎる活動のせいで」アル・カイダと対立することになる
アル・カイダとの共闘関係が無くなったことで、彼らは更に自由に動ける様になってしまった。
彼らの攻撃と政府軍の攻撃の両方に晒されたシリアの反政府組織は壊滅状態になり、最終的に最大の武装組織となったISILに反政府勢力の戦力が集約されるようになる。
そして、シリアで十分な戦力を得た彼らは、再びイラクに目を向ける。
4月にシーア派のヌーリー・マーリキーが再選を果たしたため、スンニ派の反対勢力の不満が高まりつつあったのだ。
6月。遂に行動に移す。
軍隊並の戦力と電撃的な作戦行動で、数日でいくつもの大都市を落とし、
首都のバクダットに迫りつつある。
これは度重なる刑務所襲撃と捕虜の奪還で、
有力な元イラク軍の指導者や元過激派組織の幹部を吸収したことで、
組織的な統率が取れ、軍隊の様な活動が可能になっていた。
圧倒的な士気と実戦経験の豊富な指導者が集まったISILはイラクの正規戦力を撃破し、
米軍なきイラクを制圧しようとしているのだ。
脱走疑惑があるものの、最後の米軍捕虜が開放され、米軍の中東での戦いが終わったかに見えた矢先、
イスラム過激派との戦いは、まだまだ続きそうだ。
イラク戦争後最大の危機が今、イラクに訪れている。
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