世界最弱からの脱出、米領サモアの挑戦！公式戦30戦全敗のチームがどうやって？ [スポーツ]
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0-31でオーストラリアに負けた国
2001年W杯予選。米領サモアのサッカー代表チームは、オーストラリアに0-31で負けた。
バスケでもアメフトでもない。ましてや野球ですらない、サッカーの成績である。
国際試合における、史上最大点差の敗戦とも言われる試合の敗戦国。
米領サモアと言う国は、FIFAランキング最下位。
FIFA加盟後は30戦全敗。
2011年FIFAワールド・カップ予選直前でのFIFAの記録では、229失点に対して得点２点。
得失点差実に-227点。
2011年のW杯予選前の国際試合である南太平洋大会では無得点で全敗。
名実共に、世界最弱の代表チームだった。
しかし、2011年のワールド・カップ予選に際し、
オランダからトーマス・ロンゲン監督が招聘された。
彼はアメリカのU-20代表の監督歴を持つ名監督であり、
ヨーロッパの一部リーグのような強豪チームの監督をしているはずの人物だ。
その監督が、アメリカ領サモアのチームを変えた。
米領サモアと言う国
本題に入る前に、少し米領サモアについて紹介しておきたい。
サモアの島はご存知だろうか？
行ったことのある人はいなくても、この歌を聞いたことのある人はいるのではないだろうか？
青い青い空だよ 雲のない空だよ～♪
そう、常夏の白い綺麗な浜のある国で、船出を祝ってみんなの声が追いかけて来る国だ。
この曲は、サモアの民謡に日本語の歌詞をつけたものだが、
あまり有名な曲ではないらしく、現地ではあまり謳われないらしい。
それはともかく。そのサモアである。
ただ、サモアと言うのは一つの島ではなく、
サモア諸島と言う一つのエリアのこと指す。
そして、米領サモアというのはサモア諸島の東側のほんの一部の島の事を言う。
西側が独立サモアで、サモアというと一般的にはこっちの西側のサモアのことを言う。
独立サモアが人口18万人なのに対して、米領サモアは５万５千人。
５万５千人と言うと、岐阜県の美濃加茂市ぐらいである。
いや、同じくらいの人口の市は沢山あると言う思うが、敢えて言うならそれぐらいということ。
実質、日本の一つの市で国一つを相手取るようなもの。
しかも、「米領」なので本当に優秀な選手であればアメリカ本国に上り、
アメリカのプロとして活躍できてしまうのだ。
当然のプロサッカーチームもなく、代表選手は皆本職が別にあるアマチュア選手。
そもそも勝てる道理がない。
そのチームが、新監督の就任でどのように変わっていくのだろう？
トーマス・ロンゲン監督
米領サモアの代表チーム
何人か注目の選手を紹介したい。
＜ニッキー・サラプ＞
一人は代表チームの中で最も多くの試合に出場し、
0-31の試合でゴールキーパーを務めたニッキー・サラプ。
途中で交代する事なく、最後までずっとチームのゴールキーパーであり続けた。
彼は誰よりも多くの敗北を知り、誰よりも屈辱を味わった選手。
毎回の様に二桁得点を奪われながらも、最も信頼されている選手でもある。
彼は2011年W杯予選直前の南太平洋大会で引退し、アメリカ本国に渡ってしまうが、
トーマス監督が呼び戻り、代表の正ゴールキーパーとしてゴールを守ることになる。
＜ジャイヤ・サエルア＞
何と、世界初のトランス・ジェンダー（第三の性）のサッカー選手である。
生物学的には男性であるが、サモアの国はそう言った性意識に対して寛容であり、
「彼女」が女性職に付くこともできて、男性職に付くことも出来る。
もちろんディフェンダーとして試合にも出場し、チームの窮地を何度も救っている。
＜ロールストン・アサニアニ＞
ドイツのフットボール・リーグでもプレー経験のあるロールストンは祖父がサモア人であり、
米国育ちでありながらも、受験や履歴書にはサモア人と記載し、サモアの人間として生活していた。
チームの中では唯一プロレベルのサッカーをしてきた選手で、ミッドフィルダーとしてチームをけん引する。
トーマス監督の要請により、チームに参加。
＜ラミン・オット＞
国内のアマチュアサッカーリーグに所属しており、2007年には国内最優秀選手としても選ばれている優秀なフォワード。
2011年の南太平洋大会時点では、代表入りしていなかった。
なぜなら、彼はより高いレベルのサッカーをするために米国軍人となり、米国内のプロサッカーで活動しようとしていたからだ。
だが、トーマス監督が直々に彼を招聘。米領サモア代表メンバーの一員となる。
左から、トーマス・ロンゲン監督、ジャイヤ・サエルア選手、ニッキー・サラプ選手
（ジャイヤの胸は多分・・・詰め物、のはず）
トーマス監督の戦い
トーマス監督が最初から最後まで苦しめられたのは、選手の体力面だった。
アマチュアのプレーヤーであるため、９０分プレー出来る選手は極僅か。
45分ハーフですら動き切れない選手もいるほどだった。
しかし、最弱チームと罵られようと選手のモチベーションは高く、
本職があるため、休日を含め朝と夕方しか練習出来ないにもかかわらず、
選手たちは精力的に練習に励んだ。
トーマス監督は今までプロで働く選手達を指導しており、
無報酬でチームの為に努力するような選手たちをあまり見てこなかった。
常に成果が求められ、自分のプレーで報酬が変わってしまうプロサッカー選手と、
彼らとの間には全く別のモチベーションが存在した。
サッカーが大好きだった18歳の娘を８年前に失い。
それから何年も同年代の選手たちを指導してきた監督は、彼らから学ぶことが沢山あったと言う。
「私の指導で彼らは生まれ変わったが、私自身の指導もこれからは大きく変わっていくだろう」
そう語る監督が率いるチームは、確かに数ヶ月前からは見違えるチームになっていた。
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初勝利
迎えたFIFAワールド・カップ予選の第一試合、コンガ戦。
キーパーであるニッキーは幾度と無くスーパーセーブを決め、
フォワードのラミンがゴールを決める。
得点することですら、数年ぶりの事だった。
そして、２－１のサモア優勢で迎えた後半、試合終了直前。
キーパーのニッキーの横を相手チームのシュートボールが通り過ぎて行く。
しかし、ジャイヤがそれをギリギリでクリアし、試合終了。
米領サモアは、この試合で、公式戦初の勝利を得る。
次の試合でもラミンがゴールを決め、１－１の引き分けで試合を終える。
そして、迎えた最終戦。
対戦相手は、独立サモア。西のサモアと東のサモアの戦いだ。
一度も勝てたことはなく、何度も敗北の屈辱を味わっていた。
結果は0-1の接戦の末に敗北。
上位の予選に進むことは敵わなかったが、今までの試合と比べるべくも無い、素晴らしい試合だった。
結果、FIFAランキングは204位から186位にあがり、最下位からは随分遠くなる。
３戦して１勝、１敗、１引き分け。
かつて世界最弱と呼ばれた米両サモアのサッカー代表チームを、
もう最弱などと呼ぶことは出来ない。
ドキュメンタリーフィルム
ちなみにこの話。ドキュメンタリー映画になっています。
ドキュメンタリーなので無論ノンフィクション。
実際の試合の場面や、選手たちの肉声、監督の心情などが語られています。
興味がある方は御覧ください。
一部劇場でも視聴出来ますが、オンデマンド配信されています。
公式ホームページ
「ネクスト・ゴール！世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦」
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0-31でオーストラリアに負けた国
2001年W杯予選。米領サモアのサッカー代表チームは、オーストラリアに0-31で負けた。
バスケでもアメフトでもない。ましてや野球ですらない、サッカーの成績である。
国際試合における、史上最大点差の敗戦とも言われる試合の敗戦国。
米領サモアと言う国は、FIFAランキング最下位。
FIFA加盟後は30戦全敗。
2011年FIFAワールド・カップ予選直前でのFIFAの記録では、229失点に対して得点２点。
得失点差実に-227点。
2011年のW杯予選前の国際試合である南太平洋大会では無得点で全敗。
名実共に、世界最弱の代表チームだった。
しかし、2011年のワールド・カップ予選に際し、
オランダからトーマス・ロンゲン監督が招聘された。
彼はアメリカのU-20代表の監督歴を持つ名監督であり、
ヨーロッパの一部リーグのような強豪チームの監督をしているはずの人物だ。
その監督が、アメリカ領サモアのチームを変えた。
米領サモアと言う国
本題に入る前に、少し米領サモアについて紹介しておきたい。
サモアの島はご存知だろうか？
行ったことのある人はいなくても、この歌を聞いたことのある人はいるのではないだろうか？
青い青い空だよ 雲のない空だよ～♪
そう、常夏の白い綺麗な浜のある国で、船出を祝ってみんなの声が追いかけて来る国だ。
この曲は、サモアの民謡に日本語の歌詞をつけたものだが、
あまり有名な曲ではないらしく、現地ではあまり謳われないらしい。
それはともかく。そのサモアである。
ただ、サモアと言うのは一つの島ではなく、
サモア諸島と言う一つのエリアのこと指す。
そして、米領サモアというのはサモア諸島の東側のほんの一部の島の事を言う。
西側が独立サモアで、サモアというと一般的にはこっちの西側のサモアのことを言う。
独立サモアが人口18万人なのに対して、米領サモアは５万５千人。
５万５千人と言うと、岐阜県の美濃加茂市ぐらいである。
いや、同じくらいの人口の市は沢山あると言う思うが、敢えて言うならそれぐらいということ。
実質、日本の一つの市で国一つを相手取るようなもの。
しかも、「米領」なので本当に優秀な選手であればアメリカ本国に上り、
アメリカのプロとして活躍できてしまうのだ。
当然のプロサッカーチームもなく、代表選手は皆本職が別にあるアマチュア選手。
そもそも勝てる道理がない。
そのチームが、新監督の就任でどのように変わっていくのだろう？
トーマス・ロンゲン監督
米領サモアの代表チーム
何人か注目の選手を紹介したい。
＜ニッキー・サラプ＞
一人は代表チームの中で最も多くの試合に出場し、
0-31の試合でゴールキーパーを務めたニッキー・サラプ。
途中で交代する事なく、最後までずっとチームのゴールキーパーであり続けた。
彼は誰よりも多くの敗北を知り、誰よりも屈辱を味わった選手。
毎回の様に二桁得点を奪われながらも、最も信頼されている選手でもある。
彼は2011年W杯予選直前の南太平洋大会で引退し、アメリカ本国に渡ってしまうが、
トーマス監督が呼び戻り、代表の正ゴールキーパーとしてゴールを守ることになる。
＜ジャイヤ・サエルア＞
何と、世界初のトランス・ジェンダー（第三の性）のサッカー選手である。
生物学的には男性であるが、サモアの国はそう言った性意識に対して寛容であり、
「彼女」が女性職に付くこともできて、男性職に付くことも出来る。
もちろんディフェンダーとして試合にも出場し、チームの窮地を何度も救っている。
＜ロールストン・アサニアニ＞
ドイツのフットボール・リーグでもプレー経験のあるロールストンは祖父がサモア人であり、
米国育ちでありながらも、受験や履歴書にはサモア人と記載し、サモアの人間として生活していた。
チームの中では唯一プロレベルのサッカーをしてきた選手で、ミッドフィルダーとしてチームをけん引する。
トーマス監督の要請により、チームに参加。
＜ラミン・オット＞
国内のアマチュアサッカーリーグに所属しており、2007年には国内最優秀選手としても選ばれている優秀なフォワード。
2011年の南太平洋大会時点では、代表入りしていなかった。
なぜなら、彼はより高いレベルのサッカーをするために米国軍人となり、米国内のプロサッカーで活動しようとしていたからだ。
だが、トーマス監督が直々に彼を招聘。米領サモア代表メンバーの一員となる。
左から、トーマス・ロンゲン監督、ジャイヤ・サエルア選手、ニッキー・サラプ選手
（ジャイヤの胸は多分・・・詰め物、のはず）
トーマス監督の戦い
トーマス監督が最初から最後まで苦しめられたのは、選手の体力面だった。
アマチュアのプレーヤーであるため、９０分プレー出来る選手は極僅か。
45分ハーフですら動き切れない選手もいるほどだった。
しかし、最弱チームと罵られようと選手のモチベーションは高く、
本職があるため、休日を含め朝と夕方しか練習出来ないにもかかわらず、
選手たちは精力的に練習に励んだ。
トーマス監督は今までプロで働く選手達を指導しており、
無報酬でチームの為に努力するような選手たちをあまり見てこなかった。
常に成果が求められ、自分のプレーで報酬が変わってしまうプロサッカー選手と、
彼らとの間には全く別のモチベーションが存在した。
サッカーが大好きだった18歳の娘を８年前に失い。
それから何年も同年代の選手たちを指導してきた監督は、彼らから学ぶことが沢山あったと言う。
「私の指導で彼らは生まれ変わったが、私自身の指導もこれからは大きく変わっていくだろう」
そう語る監督が率いるチームは、確かに数ヶ月前からは見違えるチームになっていた。
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初勝利
迎えたFIFAワールド・カップ予選の第一試合、コンガ戦。
キーパーであるニッキーは幾度と無くスーパーセーブを決め、
フォワードのラミンがゴールを決める。
得点することですら、数年ぶりの事だった。
そして、２－１のサモア優勢で迎えた後半、試合終了直前。
キーパーのニッキーの横を相手チームのシュートボールが通り過ぎて行く。
しかし、ジャイヤがそれをギリギリでクリアし、試合終了。
米領サモアは、この試合で、公式戦初の勝利を得る。
次の試合でもラミンがゴールを決め、１－１の引き分けで試合を終える。
そして、迎えた最終戦。
対戦相手は、独立サモア。西のサモアと東のサモアの戦いだ。
一度も勝てたことはなく、何度も敗北の屈辱を味わっていた。
結果は0-1の接戦の末に敗北。
上位の予選に進むことは敵わなかったが、今までの試合と比べるべくも無い、素晴らしい試合だった。
結果、FIFAランキングは204位から186位にあがり、最下位からは随分遠くなる。
３戦して１勝、１敗、１引き分け。
かつて世界最弱と呼ばれた米両サモアのサッカー代表チームを、
もう最弱などと呼ぶことは出来ない。
ドキュメンタリーフィルム
ちなみにこの話。ドキュメンタリー映画になっています。
ドキュメンタリーなので無論ノンフィクション。
実際の試合の場面や、選手たちの肉声、監督の心情などが語られています。
興味がある方は御覧ください。
一部劇場でも視聴出来ますが、オンデマンド配信されています。
公式ホームページ
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